絶対に避けたい行為「揉む」「強く押す」

肩こりや腰痛を和らげるために、マッサージや指圧、あん摩はよく用いられますが、
実はこれらの行為には危険が潜んでいます。
特に「強く揉む」「強く押す」といった力任せのケアはかえって逆効果になることがあり、
筋肉が硬くなってしまう原因にもなります。今回は、その理由について詳しくお伝えします。

「揉むと肉が傷む」古くから伝わる教え

「揉むと肉が傷む」とは、漢方医の先生方に受け継がれてきた言葉です。
昔から、強く揉むことが体に良くない影響を与えるとされてきました。
筋肉を揉むと柔らかくなるように思えますが、
実は逆に硬くなりやすく、損傷を引き起こす原因になってしまうのです。

では、なぜ筋肉は強く揉むことで硬くなるのでしょうか?
その理由には、大きく分けて3つのポイントがあります。

1. 筋膜が傷つく

まず、筋膜についてご説明します。
筋肉は筋線維と呼ばれる細い糸状の組織で構成されており、これが束になっているのが筋肉です。
筋膜はこの筋線維を保護し、同じ動きをする筋肉をひとまとめに包んでいる膜のようなものです。
筋肉と皮膚や骨の間で摩擦を減らし、スムーズな動きを保つ役割を持っています。

この筋膜は繊細で、強く揉んだり押したりすると損傷してしまうことがあります。
筋膜が傷つくと修復過程で肥厚し、硬くなることが多く、
その結果として筋肉や筋膜同士が癒着してしまうこともあります。
この状態になると、筋肉の滑らかな動きが妨げられ、
違和感や痛み、不快感が生じる原因となるのです。

2. 筋線維が切れる

筋肉は、非常に細い糸状の「筋線維」が束になってできています。
この筋線維は髪の毛ほどの太さしかなく、横方向に強い力で揉まれると簡単に切れてしまうことがあります。
例えば、強くマッサージをすると一瞬血行が良くなり「気持ちいい!」と感じることがありますが、
これは筋肉が傷ついているサインでもあります。

マッサージ後に感じる「揉み返し」も、筋線維が切れていることによるものです。
筋線維が損傷すると、修復過程で余分なカルシウムがたまり、筋肉がさらに硬くなりやすくなります。
これにより、血行が悪くなり、筋肉が再び硬くなるという悪循環が生じます。

3. 筋小胞体が壊れる

筋小胞体(きんしょうほうたい)は、
筋肉がスムーズに収縮や弛緩(リラックス)できるようにカルシウムを蓄える「貯蔵庫」のような役割を担っています。
通常、筋肉が収縮するときにはこのカルシウムが放出され、運動が終わると再び筋小胞体に戻ります。

しかし、強く揉んだり押したりすると筋小胞体が損傷し、カルシウムの貯蔵がうまくいかなくなります。
このため、筋肉が正常にリラックスできなくなり、さらに硬くなってしまうのです。

「強く揉む」「強く押す」と血流の関係

筋肉が硬くなると血流が悪くなり、筋肉やその周りの組織に酸素や栄養が行き渡りにくくなります。
そのため、疲れがたまりやすくなり、コリや痛みが増してしまいます。
特に、硬くなった筋肉は一時的には血流が良くなっても、長期的にはかえって不調が悪化する原因となります。

また、血流が悪くなると体の老廃物がたまりやすくなり、むくみやだるさ、しびれを引き起こす原因にもなります。

強く押すことの危険性:体の反発作用

「強く押す」という行為にも注意が必要です。
強く押されると筋肉は反射的に硬くなり、かえって緊張を引き起こしてしまいます。
これは、押された箇所にカルシウムが一時的に集まり、筋肉が一瞬で収縮してしまうためです。

また、強く押す行為を繰り返していると、次第に筋肉は硬くなり、
血流がさらに悪くなることで、悪循環が生じます。

マッサージでミオグロビンが増加する危険性

筋肉にはミオグロビンという物質が含まれており、通常は筋肉内で酸素を運ぶ役割を果たしています。
しかし、筋肉が強い刺激を受けるとミオグロビンが血液中に放出されてしまいます。
心筋梗塞の検査ではミオグロビン値が指標になることもありますが、
強いマッサージで筋肉が損傷した際にもこのミオグロビンが増加するため、体に負担がかかることがわかります。

トレーニングによる筋肉の「損傷」との違い

筋肉を鍛えるトレーニングでも筋肉が損傷することはありますが、
通常のトレーニングで筋線維が切れることはほとんどなく、多くは疲労の蓄積や細胞膜の軽い損傷にとどまります。
また、筋肉はトレーニング後に自然と修復され、適度な負荷であれば筋肉の強化につながります。

しかし、強いマッサージによる筋肉の損傷は、トレーニングとは異なり、
筋膜や筋線維を直接傷つけるため、硬化や血行不良を引き起こしやすいのです。

まとめ:「強く揉む」「押す」を控え、優しいケアを心がけて

以上のように、強い力で揉んだり押したりすることは、
かえって筋肉や筋膜を傷め、不調を悪化させる原因になります。
筋肉の健康を保つためには、優しくいたわるようなマッサージやストレッチが効果的です。
当院の肩こりや腰痛の施術では、強い刺激よりも、撫でるようなアプローチを取り入れています。

投稿者プロフィール

坂野拓也
坂野拓也平岸カイロプラクティック院長
当整体院の代表を務める坂野です。私はこの整体院を通じて、地域社会の健康と幸福に貢献することを目指しています。私自身、長年にわたる施術経験と、カイロプラクティックと東洋医学の統合的アプローチに基づき、多くの患者さんの痛みや不調を改善してきました。
札幌市生まれ札幌育ち
・2008年4月日本カイロプラクティックドクター専門学院 札幌校卒業
・元カイロ学院の直営店 藻岩店 院長
・元カイロプラクティック専門学院 講師
・ディファーシファイドテクニック課程 修了
・アクチベーターテクニック課程 修了
・2016年4月豊平区に 平岸カイロプラクティック 開院
・2017年12月PAAC SOT ベーシック課程 修了。